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「虚蜉蝣ってね、実は幻覚を見せる訳じゃないみたい」
うん、この子は予想の遥か上を平気で滑空していくから困る。
「あらゆるものに嘘を付加する、それがあたしに憑いた怪異の本質」
なるほど、幻覚は『存在する事』を嘘吐く事で見せた訳か。
「で、今回は鈴斗君の家との距離に嘘吐きました」
あいちゃん強ぇ……。
何それ、そんな事出来るの?ズルくない?
同性の私から見ても可愛くて、性格良くて、おっぱい大きくて、安産型でさ、ズルいよそんなの。後半はただの僻みだけどさ!
非戦闘民族があいちゃん唯一の欠点(かどうかすら怪しいのだが)だったのに、それがなくなっちゃったら太刀打ち出来ないじゃん。萌えポイントで勝ち越すしかないじゃん。あ、その手があったか。
「よしすーちゃん隊員、状況説明だ」
「了解であります、あいちゃん隊長!」
可愛い隊長だなおい。思わず嫉妬しそうだよ、てかしてるし。
「実は……」
こっそりと耳打ち。どうせ防音の術式でも掛けられていてお兄ちゃんには聞こえないのだろうけど、まあ言ってしまえば単なるノリというやつだ。
「……あたし、まだこの力を実戦で試した事ないんだけど、鈴斗君を実験台にしていいかな?」
私が事の顛末を分かる範囲で教えた刹那、怒り心頭に発したあいちゃん。当然至極なのだけど、そんな物騒な事は言わないでほしい。
「死なない程度にね」
けどやっぱり概ね同意なので、特に反対とかはしない。
いい加減、私たちの欲求も解消すべきだと思うのですよ私は。
リアル酒池肉林もこの際認めてしまえば、何もかも放り出して楽になれるのだから。
「いつになったらしてくれるんだろうね、お兄ちゃん」
「すーちゃんは望み薄だと思うよ」
「そんな殺生な!」
やはり兄妹という壁が立ちはだかるとでも言うのか。
でもさ、その壁を乗り越えてこそ真の愛は育まれる訳だし?そう考えないと泣いてしまいそうなのは自分が一番良く分かってるし?というか、一緒に乗り越えてくれなさそうだな、あの兄。
しょうがないなあ、私がその壁ぶち壊して迎えに行かないと。
どうやってぶち壊すんだろう。誰か教えて。
「あいちゃんが頼めば、お兄ちゃんもしてくれると思うんだよ」
「あたし彼女なんだけど」
それは遠回しにしてくれないと?そう言いたい訳だね、あいちゃん。
「私たちの友情はどこへ行っちゃったの?」
「空の彼方?」
「泣くよ?」
マジで。
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