そうだ。きっとこれは夢なんだ。

2/37
前へ
/414ページ
次へ
朝。それは一日の始まり。爽やかな気分にさせてくれる、そんな一時。 だが、俺にとっては不快でしかなかった。 「お兄ちゃん、早く起きてよう」 「そう言うなら早く俺の上から退こうか」 「あれ?お尻に何か固い物が……」 「だあああぁぁぁぁぁっ!起きる!起きます!」 俺は妹を蹴飛ばして、凄まじいスピードで跳ね起きた。 危ねぇ。いきなりバッドエンドを迎える所だった。 「痛いなぁ、もう。あ、朝食、できてるよ」 「ん。分かった」 そして妹、神酒島鈴莉(みきしま・すずり)は部屋から出て――いかなかった。 「ほら。早く着替えてよ」 「あ、ああ。悪い。今着替える」 俺はクローゼットから制服を取り出した。鮮やかな茶色のブレザー。シワの無い服にあしらわれたカフスが真新しく輝く。 そう。俺は今日から高校生だ。 気持ちも新たにして、寝間着の上を脱ぐ。 「いや待て。流れが自然過ぎて放置してたが、何故お前が此処に居る」 「お兄ちゃんの半裸姿を拝む為」 「よし、出ていこうか」 「きゃん!」 俺は鈴莉をつまみ出した。 「まったく……油断も隙もあったもんじゃないぜ」 「鈴斗(りんと)も大変だね」 そう言ったのは、身の丈が俺くらいの美少女――に耳を生やした妖狐。 「あー、九紅璃(くくり)か」 右目が澄んだ瑠璃色に、左目が深い紅色に煌めいている。 髪の毛は、狐らしく明るい茶色。それが地に付く程の長さもあった。 「そして九紅璃」 「ん?えっちぃ事ならばっちこいだよ?」 「お前も出てけーっ!」 「きゃん!」 俺は九紅璃を投げ飛ばした。
/414ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1371人が本棚に入れています
本棚に追加