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朝。それは一日の始まり。爽やかな気分にさせてくれる、そんな一時。
だが、俺にとっては不快でしかなかった。
「お兄ちゃん、早く起きてよう」
「そう言うなら早く俺の上から退こうか」
「あれ?お尻に何か固い物が……」
「だあああぁぁぁぁぁっ!起きる!起きます!」
俺は妹を蹴飛ばして、凄まじいスピードで跳ね起きた。
危ねぇ。いきなりバッドエンドを迎える所だった。
「痛いなぁ、もう。あ、朝食、できてるよ」
「ん。分かった」
そして妹、神酒島鈴莉(みきしま・すずり)は部屋から出て――いかなかった。
「ほら。早く着替えてよ」
「あ、ああ。悪い。今着替える」
俺はクローゼットから制服を取り出した。鮮やかな茶色のブレザー。シワの無い服にあしらわれたカフスが真新しく輝く。
そう。俺は今日から高校生だ。
気持ちも新たにして、寝間着の上を脱ぐ。
「いや待て。流れが自然過ぎて放置してたが、何故お前が此処に居る」
「お兄ちゃんの半裸姿を拝む為」
「よし、出ていこうか」
「きゃん!」
俺は鈴莉をつまみ出した。
「まったく……油断も隙もあったもんじゃないぜ」
「鈴斗(りんと)も大変だね」
そう言ったのは、身の丈が俺くらいの美少女――に耳を生やした妖狐。
「あー、九紅璃(くくり)か」
右目が澄んだ瑠璃色に、左目が深い紅色に煌めいている。
髪の毛は、狐らしく明るい茶色。それが地に付く程の長さもあった。
「そして九紅璃」
「ん?えっちぃ事ならばっちこいだよ?」
「お前も出てけーっ!」
「きゃん!」
俺は九紅璃を投げ飛ばした。
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