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なんて事もあったが、そんな事は既に日常茶飯事だ。
あれ?俺の貞操が危うくない?
「あ、お兄ちゃん、早く座りなよ」
鈴莉に催促され、テーブルに腰掛ける。正確には、テーブルの傍にある椅子に。
「はい。朝食」
目の前に並べられるのは、如何にも和風テイストの料理の数々。量が少な目なので、全部食えそうだ。
「鈴莉。媚薬とか入れてないよな?」
「…………………………やだなぁ、そんな訳無いじゃん!」
「おい、何だ今の間は」
「大丈夫だって。普通のも用意してあるから」
「自白しちゃったよ、この娘」
これも、日常茶飯事。そう、日常茶飯事。日常茶飯事だ……。そう思うと泣けてくるな。
「とりあえず、俺、先に行くから」
普通の食事を摂った後、鈴莉に呼び止められる前に家を出た。
「やっほ。鈴斗君」
俺にそう話し掛けてきたのは。
「なんだ、愛実か」
中里愛実(なかざと・あいみ)。世間一般で言う所の幼馴染みである。
「なんだとはなんだよぉ」
そして至極絡みづらい。
「いや、入学式初日の朝から、鬱陶しくて鬱陶しくて仕方のない、幼馴染みの顔を拝まにゃならんと思うと、テンション的なものがだだ下がるんだよな。という訳で、さっさと行ってくれねーかな」
「な、なかなかの毒舌じゃないか、鈴斗君よぉ」
こんな遣り取りも、お馴染みだ。
「しかし、お前と同じ高校とはなあ」
「鈴斗君ある所にあたしあり、なんだよっ」
「要は暇人って事か」
「その解釈は酷くない?」
他愛もない話をしながら、慣れない道をひたすら歩く。
俺の家から高校までは、徒歩で十分弱といったところか。
気が付けばそこは高校だった。荘厳な、とまではいかないが、そこそこ立派な門をくぐり抜ける。
やはり俺は高校生になったのだと、自覚させられる。
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