そうだ。きっとこれは夢なんだ。

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「とりあえず、入学式の会場に行こうか」 俺たちは講堂へと向かう。 席は自由。何処に座ろうが勝手だが、暗黙の了解的に、前から詰めて座っていた。 「まだ半分くらいしかいないねー」 俺の隣に座る少女はそう言った。 「まあ、開会三十分前だからな。妥当っちゃ妥当だろ」 「そっかぁ」 それきり会話は無い。だが問題無い。これもいつもの事だ。 元々、そこまで饒舌ではない二人なので、会話は少ない方だと思う。 お互い、それを知っているし、気にする必要も無かった。 それから三十分。順調に賑わいを見せ始め、講堂を埋め尽くすように座る、生徒の姿が見える。 式が始まり、祝辞やら、代表の挨拶やらを、だらだらと述べていく。 「さっさと終われよ……」 思わず毒づく俺。仕方のない事だと思いたい。 「確かに、真剣に聞いてる人は多分居ないよね」 珍しく賛同する愛美。 全く意見が合わないわけではないが、合う事も少ない俺たち。 男女の違いや、環境の違いから、至極当然の事だとは把握している。 だから、こういう事がやはり珍しいのだ。一般的には、と頭に付くのだが。 これが、馬が合う、というやつなのだろう。 「ホント、よくもこう口が動くよなぁ」 「大した回数聞いてる訳でもないのに、なんか聞き飽きるし」 「言えてる」 おっと、だんだんただの愚痴に変わってきたぞ。 しかし、だからと言ってどうという事もないので、口外はしない。 それから三十分程で式は終了、担任教師に連れられ教室へ向かう。 ちなみに、俺と愛美は同じクラス。これが、腐れ縁クオリティか。 着いた先は、一年三組の教室。一学年五クラスなので、ちょうど真ん中だ。
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