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昔より軽い彼女を背負い、家に帰る間、長い長い会話をした。
小さかった時、泣き虫だったお前をなだめるのは大変だったとか、いつも転ぶくせに走り回ってたとか、下手なくせにお菓子ばっかり作って食わされたとか、バレンタインの・・・
「チョコだけは・・・・美味かったな。また、食いたいな・・・。なぁ?」
玄関にはおじさんとおばさんが待っていた。
すべて分かっているように、暗い表情をしていた。
「連れ出してしまって申し訳ありませんでした」と謝る俺に、「大丈夫よ」と微笑み、
おじさんは「ありがとう」と頭を下げた。
クリスマスなんて大嫌いだ・・・そう言う度にあいつは頬を膨らませていた。
泣きそうな顔をするからプレゼントはしてたけど、やっぱりクリスマスは好きになれなかった。
好きじゃない。好きじゃないが、忘れられない日になった。
忘れたくなかった・・・
あいつに告白されたのも、初めてキスしたのも、そして、あいつがいなくなった日も・・・
もう、忘れない。何一つ忘れない。
もう何も手放したくはなかった。
あれから数日後、車の中にはあいつの携帯があった。
隠すように、見つかるように、ダッシュボードの中にそれはあった。
開いてみると、未だ、電池は切れることなく携帯が映った。
そこにあったのは、未送信のメール。俺宛の・・・
「死ぬのって、文字通り死ぬほど怖いのかと思ってた。でも、そんなことないんだね。こんなに幸せな最期ってあるんだね。離れるのも消えるのもイヤ、でも、怖くない。あぁ、恋をしてて良かった!好きになってもらえて良かった!私はすっごく幸せ!」
それは、海に着くまであいつが一生懸命打っていたメールだった。
絶対に俺には見せてくれなかったくせに・・・
ああ、クソ!大好きだ!!
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