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九月頭。
夏休みという長期休業期間が終了し、本日から面倒にも学業を再開しなければならないという、そんな憂鬱な日。
俺こと神名沢匠(カナサワ タクミ)は、体育館にて整列し長ったるい校長の挨拶に耳を傾けることなくぼーっとしていた。
暑い。
どうしてこうも面白味の無い話を延々と生徒に聞かせ続けることが出来るんだろうか。
というか聞かせ続けられなければいけないこっちの身にもなってほしい。
あの反射鏡頭。
なんてことを考え、額に少しの汗を滲ませていると、隣に立つ幼馴染が腕をつんつんと突いてきた。
「なんだ?」
「なんだじゃないわよ、さっきから小声で話しかけてるのに無視して」
少し不機嫌そうな顔をしながらそんなことを言う彼女、火崎 美智留(カザキ ミチル)。
いつから知り合いだったかわからない程小さい頃からの付き合いで、幼馴染というよりも家族に近い存在だ。
しかし未だにわからないところも多々あり。
「……こんな時に話しかけてくるなよ、注意されても知らんぞ」
「だって暇じゃない。黙って立ってるよりはあんたと……」
途中まで言いかけては口を噤む美智留。
たまにこういうことがある、何かを言いかけて黙ってしまうという、このよくわからん事。
「何?」
「あっ……えっと、ホラ、誰かと話してる方が良いじゃない?」
慌てて取り繕うようにそう言った美智留。
なんて言うかなぁ、たまに美智留がわからなくなる。
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