――出会う、廊下にて――

3/37
48人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
俺の幼馴染こと火崎美智留は、俗に言うツンデレというヤツである。 正しく言えば、俺にはデレを見せてくれないツンデレだ。 小さい頃からずっと一緒のコイツだが、たまに遊びに出かけるとわけのわからないことをしだすのだ。 例えば、映画では隣の席になっておきながら肘掛だけは譲らない、その上使ってないなーと思い俺が肘を掛けるとその上に自分の腕を重ねてきたり。 俺に使われるのがイヤなんじゃなかったのか……とか思ったりするのだが、まあ機嫌を損ねないことが一番だと思い最後まで黙っている。 涙するほどの感動大作を見終えた後では、美智留は決まってこう言うのだ。 「……た、大したこと、なかったわ……」 鼻すすって涙目になりながら言われてもねぇ、逆に意味にしかとれませんってば。 そんな感じの性格である美智留なのだが、実際はクラスでも人気があるほどの人格者だ。 俺が言うのもアレなんだが、美智留は男よりも女に人気が高い。 なんせセミロングのクセッ毛で、若干ツリ目のスポーツ万能少女なのだから。 その上人当たりが良いだなんて、普通の二文字を貫き通している俺とは真逆。 ちなみに美智留の胸はC寄りのBカップらしい。 本人はあくまでB寄りのCと言い張ってはいるが。 美智留のお母さんからのカミングアウトなのだ、まず間違い無いだろう。 「ところで美智留」 「なに?」 ふと声を掛けてみると、美智留はこちらを見ることも無く声だけで返す。 俺はその様子を横目で見て、再度口を開いた。 「提出期限が明日の美術の課題……今日家に帰ったら手伝ってくんね?」 「は? まだ終わってなかったの?」 「ああ、徹夜で仕上げようと思ってたら由香里と一緒に遊んでそのまま寝ちまった」 俺の家族愛も大概にしなければな、と反省。 ちなみに由香里というのは俺の最も愛すべき妹であり、現在小学六年生である。 俺はというと中学三年生であり、受験シーズン真っ只中だ。 そんな時期に妹と仲良く遊んでいていいのかって? そりゃあお前……妹のためだぞ? 可愛い可愛い妹の頼みとあらば、受験前日であろうと遊んであげるに決まっているだろう。 「……あんたって、ホントに気持ち悪いくらい由香里ちゃんのこと好きよね」 狙い済ましたかのようなタイミングで俺にそんなことを言ってくる美智留。 気持ち悪いとは失礼な。聞き捨てならんぞ。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!