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「さて……んじゃ、面倒ながらも行ってくるわ」
渡り廊下の端、校舎とを繋ぐその場所で美智留に一言言ってから周りの生徒とは別ルートを歩く。
「ん、いってらっしゃい」
美智留の若干控えめな声を背に、他生徒とは違う職員室へと向かう道を一直線。
ちなみに集団行動が嫌いなのでこうして列から離れられるのは嬉しい、というのは秘密。
さて、そんな自称一人が好きな俺は廊下をてれんこてれんこ歩いている時に出会ってしまったのだ。
「ん?」
廊下の壁。その階の見取り図を見ながら人差し指で現在地を確認している少女と。
「えっと……?」
地図を見るのが下手なのか、彼女は図に沿って指を動かすがすぐに首も一緒に傾げる。
一般的な方向音痴の一例だな。
そんな彼女を見てふと思い立つ。
もしや、彼女が先生の言っていた転校生なのでは?
真新しい制服(パッと見)に、明らかにこの階にいるべきではない、俺と同じ学年色の上履き。
もし違ったとしても、迷っているなら少しの力にはなってあげよう。
と、先ほど無碍にされた親切を今度こそと奮起する俺は、思い切って彼女に声を掛けてみることに。
「あの、どうかしたの?」
「えっ? あ、えと……」
声を掛けられたことに驚いた彼女は肩を縮こまらせ、両手を胸辺りの前でもじもじさせ始めた。
……なんだこの子、美智留と違って反応が女の子らしい。
―――――――――――――
「ふぇっしょぉい!」
―――――――――――――
遠くから聞き覚えのある声が聞こえたような気がしないでも無いが、まあ今は放っておこう。
「あー、職員室ならこの先だけど」
「えっ、あっ。あ、ありがとうございますっ」
慌しくお辞儀をし、彼女は俺に背を向けてパタパタと俺が指差した方向へ早足に歩いて行った。
……俺もそっち向かうんだけど、追いかけてきたーとか勘違いはしないでほしいもんだ。
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