第一章・その者死人が如く

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「そういや今日は仮眠室で寝るのか?なんならオメーは帰っても良いぜ?美緒さんには俺が報告しとくしよ。最近マトモに休暇とってなかったろ?オメー」 「……それもそうだが、俺が勝手に帰った後の少佐の様子が想像出来るからな……」 「美緒さんも分かってくれるって、装備と荷物纏めて今日は帰りな。少しは体休めろよ」 「……そう…だな。明日の準備もあるしな……」 ソイルとロジャーは自分達にあてがわれている仮眠室につくと、ドアを開け中に入って行く。 ソイルは入り口横にある電気のスイッチを押し、部屋の中央にある2つある簡素なパイプベットの内、右の方のパイプベットの右横におかれたSPR4(タクティカルライト装備)と大型バックパックに手を伸ばす。 「ソーちゃんみっけー!」 「!」 ソイルが荷物に手を伸ばした瞬間に部屋の入り口から響く女性特有の高い声がソイルの行動を止めた。 「み、美緒さん……」 「………」 (面倒くさい事になった……) 「ソーちゃん荷物に手を伸ばして何処に行こうとしてたのかな?かな?」 内心、溜め息を吐きながらソイルは後ろを振り向く。 腰まで伸ばした黒曜石の様に美しい黒髪をポニーテールで結んだ、凜とした顔立ちの女性がビールの缶を片手に顔を赤くしながらソイルを見ていた。 「……帰宅しようとしていました」 これは仕方ないなとソイルは素直に白状し、SPR4と大型バックパックに再度手を伸ばす。 「も~う、ソーちゃんがいないとつまんないよー!帰んないでぇー!」 「……子どもみたいな事を言わないで下さい。それと……飲み過ぎです……ロジャー、後は任せた」 「あっ、オイッ?!」 ソイルは大型バックパックを背中に背負い、SPR4を肩にかけて大きな溜め息を吐きながら仮眠室を後にした。 ソイルが階段を降りきるまで仮眠室からは「ソーちゃんのバカァ!」と言う美緒の声と「頼むから落ち着いて下さい!美緒さん!」のロジャーの悲痛な声が木霊していた… .
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