第一章・その者死人が如く

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「……」 (……全く、手の掛かる上官だ……) ソイルは施設の地下にある駐車場へ向かい、キーが刺しっぱなしの黒いバイクに跨る。 キーを捻り、エンジンに火を入れるとバイクは低い唸りを挙げて目覚めた。 「おっ、お前さんも帰るのかい。軍曹さん」 「……」 (……鬱陶しい) 辺りには自分の車やバイクに乗り込む他の兵士達もいた。その内の名も知らぬ兵士の一人に話し掛けられたが、鬱陶しく思ったソイルはバイクのステップを乱暴に蹴り上げ、アクセルを噴かせて地下駐車場の出口へと向かった。 ―――ヴァァァァンッ!!!! 地下駐車場に爆音を残しながらソイルはバイクを操り、地下駐車場を飛び出す。 遥か遠くには門が開けっ放しになっている。 「……」 (……) ソイルはバイクを操りながら、無言で風に靡く自身の艶のない白髪を首を横に振って退かす。 口元を微かに歪めながらアクセルを更に噴かせ、門を高速でくぐり抜け自宅への帰路へとバイクを動かす。 ―――ギャキャキャキャァッ!!!! 車道を高速で飛ばす事十数分、街中にぽつりと佇む大きな一軒家の前でソイルはバイクをドリフトさせながらブレーキをかけ、止める。 「……」 (ようやく久しぶりに帰って来たな……我が家……もう2ヶ月半は空けてたか?) 任務や訓練でしばらくドタバタしていて、なかなか帰って来れなかった我が家を見てフーッと軽く溜め息を吐いたソイルは、バイクのエンジンを切る。 「……シャワー浴びて寝るか……流石に疲れた……」 バイクをそこら辺に適当に停めたソイルはキーを抜き取り、野戦服の胸ポケットに突っ込む。 頭をガリガリと掻きながら欠伸をして我が家の鍵を、胸ポケットから取り出した鍵を使って開け、中に入る。 入った瞬間にソイルは懐かしげに目を細め、一言だけポツリと呟いた。 「……ただいま……」 .
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