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ゆらゆらと。
薄はその金色の穂を振る。まるで太陽に別れを告げるかのように。
風が舞い、穂を揺らし、虚空へと消えていった。
黄金の絨毯が一面に生えているこの地――薄野。この場所を領地として有している、この国の名を玉藻国と言った。
偉大なる国王の慈悲に導かれた、妖怪と人間が共存を目指している平和でのどかな地。
その薄の狭間を、二つの影が縫っている。
「遅いぞー!」
「そうじゃそうじゃ。小さい我らより遅いとはどういうことじゃ!」
柔らかな穂を掻き分けて、薄たちの向こうから快活な声が響いてきた。男の子特有の、可愛らしいく芯の通った声。
その二つの声は良く似ていたが、わずかに色を違えていた。
一方は春の清流に手を浸したような柔らかな温かさを含んだ声。
そしてもう一方は、秋のにわか雨のようなやんわりとしたぬくもりを含んだ響き。
その声の持ち主たちは、薄野に平行な二本の直線を描きだす。そして、ようやく野原を抜け、太陽のもとに姿を現した。
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