序章 ~玉の露は薄野に消ゆ~

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 まるで鏡に写したような二人の姿。  身長、身体の部分。どれをとっても、似てないものがないというほどだ。  身長は大人の男の身長の膝くらいの大きさ。  その釣り上った狐目も、白くさらさらと風に揺れる、肩のあたりで揃えられたまっすぐな髪も。  そして、両側についている真っ白でぴん、と立った狐の耳も。  全てが一緒だった。  その二人を判別するためだろうか、衣装だけは色が異なっている。  その袴を元にした衣服は、片や若草の萌黄を基調とし、もう片や大海の紺碧をあしらっていた。  「まったく、しょうがないやつじゃのう。寧々」  紺碧の衣装の子どもが、秋の声で傍らに話しかけた。  寧々、と呼ばれた萌黄の衣装を纏った子どもはよく似た――春の声で相槌を打つ。 「樹々の言う通りじゃ。ほんに、しょうのないやつじゃ」  そう言いあいつつちょこちょこと小さな足で、二人は野原を駆けてゆく。歩幅が小さいとはいえど、二人の動きは案外素早いものだ。  そしてその俊足に、必死についてゆく――とはいえかなり遅れてしまっている――姿が一人。
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