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東京へ単身赴任に来て一年が過ぎようとしていた。
家族のいる大阪に帰らない週末はいつも昼間で寝て、お腹が空いたら吉野家に行って二日酔いの胃を目覚めさせるというパターンが多い。
吉野家を出ると、初夏の爽やかな風が目の前を吹き抜け、空を見上げると雲ひとつない青空が広がっている。
井の頭公園でも行ってみるか。
一人暮らしが染み付いてきたのか、最近独り言が多くなってきた。
井の頭公園は、私が住む高円寺から電車で数分のところにある。
吉祥寺駅を降り、雑踏を抜け狭い路地をブラブラ歩き、公園入口の階段を下ると広大な公園が始まる。
木陰が多く、ベンチでは老人が読者を楽しみ、カップルはおしゃべりを静かに楽しんでいる。
私も目でベンチを探すが、生憎可視できるベンチには先客がいた。
ベンチを探しながら、公園を進む。
しばらく行くと、公園内広場でなにかイベントをやっている。
見ると、フリーマーケットをやっていた。
老若男女が売り子になったり客になったり。どっちがお店の人か客かわからない時がある。
子供向けのアクセサリーを売っている露天の前で足が止まる。
今度大阪に帰るときの娘へのお土産になんか買っとこうか。
その露天には小学生向けのアクセサリーや洋服などがところ狭しと並んでいた。
フリマというと中古とか使い古しとかいう先入観があったが、この店はそんなことはなく小綺麗なものが並べてあった。
「娘さん用ですかあ?」
私がアクセサリーを物色していると、奥で商品を整理していた少女が立ち上がって、声をかけてきた。
その高校生なりたてぐらいの娘をみたとたん、私はこの青空をも突き抜ける清々しさを感じた。そして、そこから何かが始まる予感がした。
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