葛藤

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「この前の文化祭の鉾の出し物作ってたとき、ユミコも作業手伝ってたじゃじゃん?カナヅチ持って?そんとき、ユウジがしゃがみこんで作業してたユミコをみたら、なんと胸の谷間が丸見えだったんだってよ。どお?うらやましい!?ユミコって小柄だけど、以外に胸あるんだってよ!!」私はこれみよがしにケンをあおってみた。 「うーん、そうじゃねえんだよなあ。」ケンは気取ってうんちくを垂れる体制に身を乗り出した。 「胸の谷間は、そら見えたら嬉しいよ。でも、なんか、パンチラには負けるよなあ。胸の谷間は、結局胸の間で胸も乳首も見えてないんだゼ。」 私は納得がいかない。 「パンツこそ、布が見えてるだけじゃん。洋服見てるのと変わらないと言えばそれまでじゃん。」 「はあー、AVが発達した時代はやだねー。わびさびというものがないっ!実に嘆かわしいっ!」「パンツという絹の布越しにあるアレの形を推測し、かつ布の色でユミコの好みを推察し、今日の湿度及び布のシワのより具合からムレムレ度を妄想するんだろうが!!」ケンは鼻息を荒くして力説した・・・。 もうあきれるというより、引いた。 よっぽどユミコが好きなんだろう。 いや、ケンとユミコはまともにしゃべったことがないので、ユミコのカラダを妄想するしかないのだ。 その当時、私も少なからず好きな女の子にそういうケンみたいな屈折した思いを持っていた。ケンに対する呆れと批評は、自身に対する非難でもあったのだ。自分を自制するための・・・。 そういう意味では、ケンの方が精神的に健康で、私の方が仮面をかぶっていて自分を出そうともせず鬱屈していたんだなあと思う。 井の頭公園のパンチラ少女しかり、である。 あのころのどうしても手に入らない高根の花の美少女。それを重ね合わせてしまう。 手に入らないのではなく、手にしてはいけないのだ。 その花は手にしたとたん、折れてなくなって消えてしまうことがわかっているから。 すくなくともこの私の手では・・・。
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