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「とうとうこの日が来たようだな?」
目の前の机に両肘を乗せて顔の前で手を組んでいる男が俺に問い掛ける。
「あぁ、俺の……いや、俺達の新しい世界の門出の日だ」
俺は今、栗色の髪が特徴的な男、というか友人の円藤 巧とお互い神妙な顔をして向かい合っている。だがそれも俺の言葉と共に崩れた。
「やっとだな亮太!? 念願のVRゲーム! しかも今話題の新作VRMMORPG゛ANOTHER WORLD゛だぜ!? それがやっと今日プレイ出来んだ、喜ぶなって言うほうが無理だよな!?」
「あぁやっとだ。今日で俺達の苦労は報われるんだ……」
そう、この日の為にどれだけ頑張って来たか……。
週に五日、月水木土日に平日は6時間、休日は10時間、時給650円のバイトを行ってきた。
まだ高校生でありながら、俺達にはニートの片鱗の゛働きたくないでござる゛精神が宿って来ていたので他の人には普通の事でも、俺達にとってはバイトを行うという事は、はるか昔に僧達が行っていた゛修行゛の様なものだった。
だが目的を果たす為には、それは致し方ないことではあった。
なぜなら俺達には目的を果たす為に必要な資金が明らかに不足していたからだ……
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