ハジマリ

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「ブー、違います。富田高校の方。」 「へー、あっちの方にも塾があるんだ」 「ケッコー評判よくてさ、 生徒の能力に合わせて指導法を変えるとかで、 まぁ家庭教師みたいな感じかな。 真鶴もタカ坊もそっちに変わるっていうからソッコー決めた」 「ふーん、ずいぶんよさそうね。真吾も大きくなったらそこに…… あら、パンク?」 祐輔の自転車は後輪がぺちゃんこだった。 「てゆーかー、いたずらされちゃったみたい」 祐輔は唇を尖らせ、中腰になって後輪を指さした。 タイヤの側面が切り裂かれたようになっている。 「ま、ひどい人がいるのね」 「おばちゃんも気をつけた方がいいよ、南口の第二駐輪場。ゴミ太郎の寝城なんだよね」 「ゴミ太郎?」 「この辺にもたまに来るじゃん、チョー汚いオヤジ」 「自転車に乗ったあの人?」 荷台に段ボール箱をくくりつけた自転車を押してるホームレスだ。 こんな住宅街に現れるのは、換金できそうな廃品を探してのことなのだろうか。 「そう、ゴミ太郎。あいつ、第二駐輪場横のふれあい公園で寝泊まりしてるんだ」 「その人にタイヤをいたずらされたの?」 「どうもそれっぽい」
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