ハジマリ

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「もうっ、ムカつくー」 亜希子が女子高生のように悪態をつくと、オウム返しに声がかかった。 「ムカつくー」 祐輔だった。門の脇から顔をのぞかせニヤニヤ笑っている。 「ホント、ムカつくわ。 ムカつくムカつく」 恥ずかしさを塗り隠そうと、亜希子は何度も繰り返した。 「ねぇ、おばちゃん、真吾君はいる?」 「遊びにいってる」 「じゃあ、これあげといて」 祐輔は門扉の隙間から何やら差し出してくる。 亜希子はバッグの中身はそのままにして彼に近づいていった。 「まぁ、M2カードじゃない。いいの?」 マイスターマジックという人気アニメのカードだった。 それが何十枚と束になっている。 Meister Magicと頭文字がMの単語が2つ続くのでM2と略されている。 M2カードは、カードの表にアニメの登場キャラの絵が印刷され、 裏にはそのキャラの名前や特徴が記されている。 五枚入りのパックが200円という、昔でいうなら 駄菓子屋で売っていたプロマイド程度のオモチャだ。 ところが子供たちはみな、男も女も関係なく、このM2カードの収拾に目の色を変えている。
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