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めったに出ないカードは1枚が数千円数万円で取り引きされ、盗難事件も発生し、学校でも大きな問題となっている。
「うん、かぶってるやつだから。
真吾君も持ってるかもしれないけど、そしたら他の子との交換用にすればいい」
「ありがとう、でもこんなにたくさん、悪いわね」
「いいっていいって。
これからは受験勉強に集中しなきゃならないしさ、
そろそろ足を洗おうかと思っているんだ。
まだちょっと未練があってアレだけど、完全に興味が無くなったら、M2のコレクションは全部真吾君にあげるよ。
カードもピンバッチもフィギュアも。
じゃ、今度こそ行きまーす」
「ちょっと待って。
祐輔くん、甘いもの好きだったよね」
亜希子は買い物袋の口を広げ、中を覗きこんだ。
ショートケーキとエクレアを買ってきている。
「いいよ、気を遣わなくて。
それ、真吾君のおやつなんでしょ。
今度おじゃましたときにいただきます」
祐輔は大人びた台詞を残して自転車を押しはじめた。
彼は真吾と3つ歳が離れていたが、キャッチボールやテレビゲームの相手をしてくれる。
亜希子は週3日パートに出ているため、
そうやって遊んでもらえるととても助かる。
我が子もああいうお兄さんになってくれればなと思う。
その一方で我が子も気付いたら大人になっているのだろうなと一抹の寂しさをおぼえもする。
祐輔の後ろ姿を目で追いながら亜希子が感慨にふけていると、
みたび電話が鳴りはじめた。
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