時には楽しい唄を

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 ※ ※ ※ 「ずっと聞きたかったんだが、お前はなんで死神になったんだ?」 「そーゆーの聞くタイプじゃないくせに」 森の木々の隙間から見える星空を見ながら不意に語りかける。 オルクスは死神だ。誰よりも死神らしい死神だ。 狂気と暴力の塊。 戦場を駆け回る様を目の当たりにすると驚嘆する。 情の一欠けらも感じさせない強さ。 躊躇をする暇すらないのだ。 それらの根源は一体何なんなのだろう。 どうしてそこまで非情になれたのだろう。 自分以外の者が。 ハーディスは思う。 「言いたくないなら無理には聞かない」 オルクスはしばらく考え、小さくつぶやく。 らしくないな、ハーディスは考えていた。 「唄をもう一度――いいや、人間が憎いから。人間に私が味わった苦しみを味あわせてやりたいから。すごく単純でしょ?」 「……唄ってなんだ?」 オルクスは立ちあがって、空を見る。 長い話になることは予想が付いた。それに楽しい話ではないことも。 オルクスはくるりと振り向いて、ハーディスはの前に腰を落とす。 「長いよ?」 オルクスは明るい楽しそうな声で言う。それにハーディスは無言で頷いた。
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