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『肌見せしないとかダサい』?一体何を言っているんだ?そもそもお前達は『見せ過ぎ』だ。そっちの方が余程ダサいだろうに。
僕はすかさずカップルが歩いて行った方向――つまり僕が歩いて来た方向を振り向いた。しかし傘を持った人々に埋もれ、その姿はとうとう把握出来ずに終わってしまう。
「…………」
――気分が害された。ただでさえ靴や服が汚れる雨模様、ジメジメした湿気と中途半端に生温い空気。おまけに先程の一件。
これだから人間界は嫌いなのだ。仕事じゃなければ、絶対にこんな所へは来たりしない。
そう。僕こと黒薔薇王騎は、実は人間ではない。死神界で生きる死神の一人なのだ。因みに見た目は人間と同じだし、意思の疎通もちゃんと出来る。まあ、だからこうして違和感なく潜入出来ているのだが。
それでも、それとこれとでは全く別次元の話だ。
心に居座った不愉快さを、どうしても拭えない。僕は今きっと、近寄り難い雰囲気を漂わせ、そんな表情を顔に貼り付けていることだろう。
「はぁ……」
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