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人でごった返す大通りを避けるように抜け出し、住宅街と言う名の迷路へ歩を進める。
標的――魂を刈る――を見付け出せる確率と効率は悪いが、今は一秒でも喧騒から逃れたかった。
別に慌てることはない。見付からないなら、また違う土地へ行けばいいだけなのだ。それに、僕の仕事のペースは仲間内では早い方だ。
それらを捲し立てるかのように頭の中で語る様は酷く滑稽だった。無様だった。『ソレ』は、僕が心底嫌うモノの一つ。
でも、何よりも嫌いなモノが僕にはある。それは――
×××××××
今思い返すと、僕はここで進路を変えるなり、死神界に帰るなりするべきだったのだと思う。
しかしそれらは全て後の祭と言う奴で、僕はある事を知ってしまった。それがなければ、僕があんな思いをすることはなかったのに。
言うなれば、僕にとってのパンドラの匣を開けてしまった。
他の誰でもない、僕自身の手で。
×××××××
住宅街を回り、どれくらい経っただろうか。時間帯が悪いのか人が全然いなかった。
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