第一邂逅

3/20
前へ
/520ページ
次へ
「―――…い…ぉい…っ、おいってば、律!」 「―――え?―――いてっ」 頭を軽く叩かれた。驚いて見上げると、少し怒った顔をした――担任でもある――有馬先生がこっちを見ていた。 手には歴史の教科書。どうやらこれで叩かれたらしい。 「俺の授業中に寝るだけじゃあ飽きたらず、ぼんやりするたぁいい度胸だな?」 「えっ、そんなこと…」 まずい。有馬は生徒の話をよく聞いてくれる良い先生だが、授業にはうるさい。 まずったな、と思ってると有馬の手が額に触れた。 「…?何スか?何か付いて…」 「何って…顔色が悪いじゃねぇか!具合悪いんじゃないのか?無理せず休めよ!」 「えっ、あ、はい…。すみません…」 本当に心配そうな顔で覗き込まれて困惑する。 自分の額に触れるが、熱はなさそうだ。 そんなに酷い顔色なのだろうか。ふと下を見るとくしゃくしゃのノート。所々湿っている。汗が酷かったらしい。
/520ページ

最初のコメントを投稿しよう!

108人が本棚に入れています
本棚に追加