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「―――…い…ぉい…っ、おいってば、律!」
「―――え?―――いてっ」
頭を軽く叩かれた。驚いて見上げると、少し怒った顔をした――担任でもある――有馬先生がこっちを見ていた。
手には歴史の教科書。どうやらこれで叩かれたらしい。
「俺の授業中に寝るだけじゃあ飽きたらず、ぼんやりするたぁいい度胸だな?」
「えっ、そんなこと…」
まずい。有馬は生徒の話をよく聞いてくれる良い先生だが、授業にはうるさい。
まずったな、と思ってると有馬の手が額に触れた。
「…?何スか?何か付いて…」
「何って…顔色が悪いじゃねぇか!具合悪いんじゃないのか?無理せず休めよ!」
「えっ、あ、はい…。すみません…」
本当に心配そうな顔で覗き込まれて困惑する。
自分の額に触れるが、熱はなさそうだ。
そんなに酷い顔色なのだろうか。ふと下を見るとくしゃくしゃのノート。所々湿っている。汗が酷かったらしい。
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