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たしかに俺が行く先での希沙のエンカウント率は異常な数値を占めている。
休日街を出歩けば希沙に見付かり、旅行先では希沙に抱き着かれてと、まるでスライム並の出没率の高さだ。
さらには、旅行先のホテルの部屋にまで出没した時は冷や汗をかいた。
両親や花は何とも思わずに受け入れるが、常識人の俺には何とも受け入れ難い事。
それを受け入れたら希沙が俺の影であるのを肯定するような事実だ。
もしかしたら希沙の行くところに、俺がたまたま行くだけなのかもしれないが………ってそれじゃまるで、運命のレッドロープみたいジャマイカ!
「……………陽」
微かな笑みを浮かべながら両手を広げて来るその様は、普通の野郎だったら飛び付くくらいの破壊力を誇るが、ダイアモンドハートな俺の心は落とせない。
「悪いな希沙。今日の主役は翠なんだ。だから希沙は大人しく別荘へ戻りなさい」
まあ言うことを聞くハズもなく。
「…………ヤッ」
毎度同じく、可愛く拒否されてしまった。
「希沙……」
「あ、あの…お兄」
「ん、何だ翠?」
「あのね、希沙さんと三人でお散歩するのも、いいんじゃないかな…って、思って」
優しいのう、優しいのう翠は!
せっかく久々に二人きりになれるかもってチャンスを、自ら手放すなんて、優し過ぎるよ翠!もはやその優しさは罪だよ。
翠はえへへ、と笑うと希沙の手を引き俺の手と繋がせて、空いたもう片方の俺の手を翠が握る。
……あ、これって両手に花ってやつ?
翠はまた優しく笑う。それを見てしまったら勝てない。
俺は肩をすくめながら笑って、二人の手を引きながら朝の浜辺を三人で散歩するのだった。
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