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…………。
「お………兄!」
……悪夢からは醒めたらしい。
つまり、もとの'現実'に戻ったということか。
その'現実'が何なのかは眠気でハッキリとは分からないが、今が現実だとは分かる。
「おき…お兄!」
体が揺さ振られている。
ああ、本当に現実に戻れたんだな。安心安心。
あんな悪夢の中にずっといたら気がどうにかなりそうだったし大助かりだ。
だが何が俺を現実に引き戻した?
自分の力ではどうにも出来ないくらい、深く悲しい悪夢だったのに。
「おきてお兄!」
そんな名探偵さながら推理を始める俺は、まどろみの中から一気に覚醒させられた。
バッ
ズドンッ!!
「痛え!」
授業中の居眠り中に、肘がガクッとなって起きた時のそれが数十倍になったような激しい目覚め。
下手したら死人すら目覚めるぞこれ。
名付けよう。これは「死者の目覚め」だ。何故かフライパンとお玉を持った金髪の女性を思い描いたのは謎だ。
ともかく。
俺は今ベットから地べたに頭から落ちている。
前言撤回だ。死人がさらに死ぬぞこれ。
後頭部を摩りながら頭の激痛を堪えて起き上がる。
痛いなぁ、ちくしょう。
誰だ、こんな起こし方を教えた奴は。てか実行した奴は。
瞼を開けて俺は感度良好な視界を目の前へと集中させる。
そこには寝巻のまま仁王立ちする見慣れた顔があった。
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