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後悔した時には既に遅いって展開はお決まりだ。
しかも、言ってしまえば後悔したらそれは事後になる。誰しも事前に後悔する事なんて'有り得ない'。
それが出来たとしたら、恐らくそいつは宇宙人、未来人、異世界人、超能力者だ。
もしそれ以外の方法で出来たとしたら、ソイツはおそらく'正夢'を見たんだろう。
事前に『この先後悔有り』との立て札があれば、皆その立て札とは別の道を行くだろう。
誰もが望んで後悔する道なんて選ばない。
後悔は予想しない場所から現れる、言わば奇襲のようなものだから。
もしあの時、俺が事前に'ソレ'を知ってさえいたら、事後は異なる分岐先へと歩んでいただろう。
「……花火大会?」
時間は進み会長の別荘で過ごす夜は今晩で最後となった。
あの日以来、俺と翠が二人きりになれる機会が皆無になってしまった。
まるで俺と翠の秘め事が最初からわかっているかのように、ニタニタと笑みを浮かべて囃し立てる女子メンバー。
希沙に至っては「初夜はいつか」と聞いてくる始末。
言葉の意味を理解出来ないでいてくれた翠はともかく、俺はいたたまれない気持ちになって、ついつい翠から離れてしまったりもした。
そんな中会長の口から飛び出して来た吉報とも言える素晴らしき単語、花火大会。
どうやら今夜近くの砂浜で花火大会がやるらしい。もちろんついさっきまで使っていた砂浜から打ち上げるらしく、今朝の砂浜は賑やかだった。
しかし俺はあまりその人口密度の濃さに興味を抱かなかったため、まったく疑問に思わなかった。
だからこそ、今会長が放った単語に俺が飛び付いたワケだ。
つまりそれは、翠と二人きりになれるチャンスかもしれないからだ。
会長や希沙、千秋とも仲良くしたいって気持ちもある……が、今は翠と一緒に居たい気分なのだ。
みんなそれぞれ特別ではあるのだが、彼女達には悪いが翠はなかんずく特別なのだ。
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