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千夏にご飯を食べさせて、顔を洗ってあげて、服を着替えさせる。
それから、千夏をリビングのおもちゃコーナーに連れて行くと、急いで洗濯機から衣類を取り出して、リビングに戻った。
千夏は動物の声が出るおもちゃに夢中で、小さな指でボタンを押していた。
真剣に何かに取り組んでいる時は、出来るだけ声を掛けない。
これが私達家族のルール。
千夏だけじゃなく、千春も台本を覚えたりしなくちゃいけない時がある。
家族が集中している時は、その邪魔を出来るだけしないようにすることが、私達が決めたルール。
だから、私は千夏の真剣な表情に声を掛ける事を止め、リビングから繋がるベランダへ足を向けた。
今日は天気がいい。
朝の空気のすがすがしさと、ぽかぽかな太陽に開放感を感じ大きく伸びをすると、思わず声が出た。
洗濯物を干し終えてリビングに戻ると、千夏はまだ動物の声が出るおもちゃのボタンを押していた。
クスッ。
本当に千春そっくり。
真剣な眼差しは揺るぎない輝きをもっている。
私は、何度この子に救われただろう。
私は、何度この子に助けてもらっただろう。
千春と離れて……。
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