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「愛してる…」
涙で擦れた低い声が耳の奥で確かに響いた。
千春……。
ぽろぽろと頬をつたう暖かな雫は、私の胸に降り注ぎ、この温もりが『夢じゃない』って教えてくれているようだった。
ゆっくりと、私の頬を千春の掌が優しく包み込み、親指でそっと雫を掬い取ってくれた。
少しだけ震えているその指が、
温もりが、愛おしくて、手の平にそっと頬を預ける。
視線を合わせていてくれる千春の顔は、今迄にないくらい眉を下げ、真っ赤な瞳で、私と同じように涙で濡れていた。
「千春…。私も。
私も、愛してる…」
だから、泣かないで?
いつもみたいに、意地悪に笑ってよ。
唇の端を上げて、笑ってよ。
そう思っているのに、千春は私の言葉に、泣き崩れるように、寄り掛かってきた。
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