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「千春…」
私の肩に顔を埋めて、嗚咽を繰り返す千春の背中に腕を回した私は、宥めるように広い背中を優しく撫でた。
「離さない…。もう、離さない…」
そう呟く千春に、私は「ん」と小さく頷くいた。
うん。
離さないで。
ずっと、
この腕の中に居させて…。
私は、千春に回す腕の力を強めた。
「愛してる…」
もう一度私の瞳を真剣な眼差しで見詰め、千春がそう言うと、綺麗な顔が近付いて来て、キスを予感した私は、静かに瞼を下ろした。
ドクドクと高鳴る心臓に苦しくなりながらも、千春の気配が間近に迫ってきている感覚に、心が満たされていく。
私の頬に添えられた千春の手に少しだけ力が入り、誓うようにそっと唇が触れた―……。
瞬間―………。
「「おめでとう!!!」」
突如掛けられた沢山の声と、拍手。
そして、フラッシュの音。
瞼を下ろしていても分かるほどの、眩しい光達。
ビクッ!!
と全身を振るわせたのは私だけじゃなく千春も同じで…。
私の頬に触れる掌が揺れると、直ぐに唇が離された。
あ……。
もう少し、触れていたかった温もりが遠のいていくのを感じ、寂しさを覚えながら、ゆっくり開いた瞳の先には、私ではなく、その後ろを睨みつける千春の鋭い眼光があった。
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