ある晴れた春の日

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今年は桜が蕾をつけるのが早かった。 もう満開と言っていいだろう。 春先の寒空の下ついた蕾が全て開いた。 満開を待つことか無く散っていった花たちのピンクの絨毯も少しずつ厚みを増していく。 いつものように桜の写真を撮っていると突然突風が吹いた。 春一番だろうか。 一瞬目を閉じたトモヤだったが、再び目を開いたときの美しさに再びシャッターを切り始める。 視界いっぱいに広がる桜の花びら。 ひらりひらりと空を舞う。 そこはまるで喧騒から切り抜かれたかのように静かで、カシャカシャとトモヤがシャッターを聞る音のみが聞こえていた。 やがて舞っていた花びらは地面へと落ちていく。 トモヤがふと顔をあげると桜の木の裏から少女が顔を覗かせていた。 少女はトモヤよりと少し幼い顔つきをしていた。 少女はトモヤと目が合うと慌てて木の裏に隠れた。 人のことを見て隠れるなんて失礼なやつ、そう思いつつトモヤはそうそうにそこから去ろうとする。 なぜこんな場所に少女がいるのかは分からないが、トモヤは関わりたくなかった。 「ぁ…、ま、待って」 なぜなら彼女が『人』ではないと気付いたから……。
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