春の逢瀬

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春の逢瀬

「人ガ来ナイ」 「ドウシテ? 」 「サミシイ」 精霊たちは人がいる場所を好む。 山の中にある祠はだんだんと忘れ去られていった。 人の足は遠ざかり、人々は祠の存在を忘れていった。 精霊たちは嘆き、悲しみ、遂にはこの地を離れていった。 他の木々に比べ若かった桜の精霊はただ一人取り残された。 ある程度成長してからでないと宿り木から離れることが出来ないからである。 取り残された桜の精霊は来る日も来る日も涙を流し続けた。 どれくらい一人でいただろうか。 ずいぶんと長い間一人だった気がする。 もう少し……もう少しで人がいるところへ行ける。 そう桜の精霊が思い始めた頃、人の子が祠を訪ねてきた。 桜の精霊は人が訪ねたことに歓喜した。 人の子はどんどん成長していった。 人の子が訪ねるようになって暫くすると精霊は宿り木を離れられるようになった。 そして人の子、トモヤの前に姿を現した。
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