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7話目 咎人
「あんたが犯人よ」
いきなり突き付けられた真相に僕自身、頭がフリーズしたのが分かる。
現世の記憶がある霧島と違い記憶がない僕にどうする事もできない。
泣いて許しをこうても、僕が今から霧島の部屋に行き自身の心臓を差し出そうと、彼女は喜ばない。
罪悪感のかけらもない謝罪など彼女の心を埋めることはできない。
むしろ、心の隙間を開けてしまうに違いない。
スッ
桐谷さんによって強く握り上げられていた胸倉から手が力を弱めながら去って行った。
「明日の入隊試験、落ちんじゃないわよ」
「え??」
「合格してこれから隊長に罪滅ぼしとかいいながら奉仕してきなさい」
「…」
明日の入隊試験を合格して霧島の隊に入隊する。
そこで霧島の為に働くという罪滅ぼし。
それしか僕に方法はない。
「早く寝なさい」
そう言うと桐谷さんは去って行った。
――――――――
「隊長…彼を殺さないのですか??」
ここは隊長室。
真っ暗な室内で霧島と桐谷が安藤について話していた。
「記憶のない人間を危めるなど自分の気持ちを一方的に相手に押し付けるただの自己満足にすぎないだろ。それはたちの悪い冤罪と同等だ」
「しかし…」
「それに、安藤は生かしておく必要がある」
「え…。何かわかったんですか??」
霧島は近くの本棚にある本や資料の中で一つの書物を出し慣れた手つきでページをめくる。
「奴は咎人(トガビト)だ」
咎人。
本来一人一つずつの筈のメモリー能力だが、神以上の力欲しさ所以に強欲の念が三途の川を渡る際に形になりメモリー能力を二つ所持する者をさす。
この世界では200年前を機に現れる事はなかった。
神以上を求めた強欲の持ち主として周りからは煙たがられる。
「厄介なのはそれだけじゃない」
「メモリー能力ですか」
「あぁ。安藤のもう一つのメモリー能力はハデス側だ」
月明かりが傾き始める。
「安藤のメモリー能力の事がバレたら必ずハデスが安藤を奪いに来る。ハデス側の事については各隊長ですら知らない。向こうから攻められれば動きにくくなる」
「そうですね。…一応総長には連絡するべきかと」
「連絡済みだ。」
霧島は頭を抱えながら喋る。
「安藤がメモリー能力を自在にコントロールできなければ真田は目を覚ますことができない」
事実は滑稽の如く己を見つめる。
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