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橙。
全てのモノは遠くから見たほうが綺麗だと思うわ。
綺麗な人ほど遠くから見たほうが美しく、憧れる、近くで見れば見るほど幻滅しちゃうわよ。
私がそういうとアキラは笑う。
「砂漠とか海って空中映像で見たら凄い綺麗だよなー。砂漠とか芸術に見えるよ」
口に含んだ飴玉を舌で転がす。
安い飴玉は口全体に広がる甘味に比例して小さくなっていく。
「でも、近くで見たら、海もゴミだらけだわ。」
「うん」
「砂漠もただの細かい砂よ」
「うん」
甘い、甘ったるい。
彼の笑顔も口の中も全てが甘ったるい。
「でも繭サンもでしょ?」
「……」
「遠くで見たらあんなに綺麗で優しくて気高い生徒会長が、安い飴玉舐めて泣きそうなの我慢してるなんてスッゲェ笑える」
苛々する。
ガリッと飴玉を勢いよく噛み砕いた。
破片になった甘い欠片を飲み込んだ。
荒い欠片の破片は喉を刺激し、少し、痛い。
「繭サン」「ラクにしてよ、アキラ」「誘ってる?」
違う、と言えないまま、私の視界は真っ暗になり夕焼けの橙に染まる生徒会室の天井と妙に子供っぽいアキラの顔。
(キレイとは死んでも言えなかった。)
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