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どうしよう…
アタシは田んぼの真ん中で困り果て座り込む。
衣装がタップリ入った荷物のせいでもあるんだけど。
はあああ…
アタシはもう数えきれない程ため息をついている。
ジワジワジワ…
ムカつく程の蝉しぐれ。
「あ~、もう!アンタ達うるさい!ちょっと黙ってくれないと、考えがまとまらないのよ!」
と田んぼの向こうに広がる森の中にいるであろう沢山の蝉に八つ当たりをした。
「ああ…アタシって、なんでこう…ヘタレなの?あんなに、東京出てくる時に予行練習してきたのに」
そう…アタシはヘタレだ。
だいたいアタシが田んぼの真ん中で困り果ててるか…
説明しなければなるまい…。
アタシ…蝶子。
名前の通り蝶々みたいに綺麗な大人の女性!
胸なんてGカップよ!
貧乳の女の子がいつもうらやましがるのよ。
ウエストなんて60ないのよ~
見事なくびれ!
で、キュッと上がった可愛いお尻。
身長は173センチのモデル並だし。
髪はブラウンで巻き髪。
顔?
見ればわかるじゃない!
歩けば必ず男に声かけられるし、…芸能プロの人から名刺なんて束で貰うほど…
年齢…
年齢なんてただの数字なんだけどさ…
今年30…
でもね、若くみられるから22とか23とかサバ読んでるのよね。
…で、そんなキュートで可愛いアタシが何故に田んぼの真ん中にいるのかと言うと…
アタシの前にある小道の先に…一軒の家がある。
アタシんち。
じゃあ、さっさといけば?とか言われそうだけどね。
そうもいかない。
アタシ…15歳の時、家出したんだ。
それから15年…。
一度も帰らなかったし、手紙も電話もしなかった。
絶対に親は怒ってて、アタシを家に入れてはくれないわ…
仕方ないわよね。
家出したんだもん!
おっきな胸がバクバクと弾けだす。
ああ、肩凝るわあ~
胸重いんだもん。
シリコン少なくしとけば良かったかしらね?
フ~ッとアタシはまたため息をつく。
家出した事よりも…
絶対に両親に殺されるネタと共に帰郷なんだもんなあ。
蝶子。は源氏名。
本名は、
福山虎ニ郎。
時代劇か!って名前。
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