アタシ、蝶です。

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元…男。 でも、生まれた時から心は乙女だったもん! 初恋は近所のお兄ちゃん…ジャニーズ系で素敵だったわ。 でも、体が男なんだよねえ… お父ちゃんも、アタシが長男だから厳しくするし。 だから名前も虎がつく。 子供の頃はトラって呼ばれてた。 猫か!つうの! お父ちゃんが竜一郎だから… 竜に虎って… ダサイ…センスなさすぎ! せっかく名字が福山なんだかさあ… あのイケメン芸能人と同姓同名とかね… って、現実逃避している場合じゃないわ。 アタシは決心して立ち上がる。 重い荷物を持ち、ノッシノッシと歩く。 玄関まであと数メートル。 ちょっと…足が震えて来たわ… 情けない。 アタシは両手でホッペをパンと軽く叩いた。 よし! 気をとりなおして、 「出ていけ!貴様の来るとこじゃねーわ!」 と耳をつんざく怒鳴り声が。 えええ、アタシまだ…玄関にさえ辿り着いてないわよう! 涙が零れそうだった。 やっぱり…お父ちゃんはアタシを許してくれないんだわ… 俯くアタシにドンッと誰かがぶつかった。 「突っ立ってんじゃねー…ぞ」 アタシにぶつかり文句を言おうとした男が、アタシの顔を見て、後半は優しい口調になり、ちょっと鼻の下がのびている。 まあーね、 わかるわあ~ だってアタシ美人だもん! アタシが微笑むと男は照れ笑いをして頭をかいている。 「こんにちは」 挨拶をして微笑むと男も頭を下げる。 そしてアタシの胸元にくぎつけになる。 まあ…わかるわあ~ 「何だ、まだいたんか!」 と怒鳴り声と共に大量の水がバシャーンと… アタシと男をずぶ濡れにした。 「くそ、」 男は悔しそうにはき捨てるがアタシには愛想笑いをして足早に去っていった。 玄関からバケツを持ち顔を出したのは… お…お父ちゃんだった。 15年振りのお父ちゃんは白髪が目立つくらいで相変わらずのマッチョで… 極道で…睨まれるとアタシは…動けなくなる。 「おまえ…」 お父ちゃんがアタシを見た。 ひいいい… 殺されるうう~ さよなら…東京のみんな… さよなら…優ちゃん。愛していたわ…。
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