ただひとつ

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「どうしたんだ?彩夏」 ふと思考を巡らせていると、前の席から菊川 友基が話し掛けてきた。 さっき孤立はないと言ったが、私のつるみ友達はこの友基である。 「何、彩夏またボーッとしてたの?」 更に声を掛けたのは後ろの席の杭無 欄。この子も友達で、中学から一緒の親友だ。 この総勢41人のクラスで、この3人が1グループとなっている。 「うーん…人間観察?」 「またぁ?人観察して何が楽しいのさ」 友基は口を尖らせて言う。 友基はいちいち人の関係を考えるのは嫌いなんだそうだ。 こういう性格だから、友基は好感が持てる。 「だから真奈によく騙されるのよ。少しは人を疑うことも知りなさいな」 欄は友基を馬鹿にするように言う。 因みに真奈というのはクラスメイトの連邦 真奈。 言葉を扱えば天下一。駄弁が特技で一回喋りだせば止まらない。オマケに責め口叩けば誰もが答えられなくなる言葉の魔術師と謳われている。 そしてその言葉の魔術にいつも騙されてるのが、他の誰でもない我が友人である友基だったりする。 「うるせー、真奈に勝てる奴なんかいるのかよ」 「いないと思うけど、友基は私達がいつも言ってるのに真奈の口車に乗せられるんですもの。ねぇ彩夏」 「そ、疑うことを知らないんだから」 「とりあえず、欄は口調戻せ。見下し口調うぜー」 私達は笑う。 私達は本当に信頼しあってる。 .
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