<第零章>

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アパートまであと少し。 次の角を左に曲り、真っ直ぐ30メートルほど歩けば辿り着く。 その曲がり角に一本。 さらにアパート傍の小さな公園には街灯が三本もあり、美香の帰り道を充分なほど照らしてくれている。 同じアパートの住人はもちろん公園を挟んで反対側にあるマンションの住人でも、 この時間帯であっても何度か見かけたことがある。 人通りが無いわけではない。 大丈夫だ。 先ほどから背後を気にしているが人の気配はまったく無い。 あの気味の悪い視線はやはり気のせいだったのか。 美香は少しだけ安心しつつ、人がいることを少し願いながら街灯が照らす角を左に曲がった。 ――・・・え? 人はおろか、自らのアパートさえも見えない。 自分を照らす街灯の光は曲がり角から10mほどのところで儚く消え、 アパートと共に闇に飲み込まれてしまっている。 辺りを闇が支配していた。 公園の街灯は全て消えている。 月は雲に隠れている。 そして、自分の背後には・・・ ――誰かいる!?
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