<第一章>とある5月の

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「なるほどな…」 どこかの会社員のようなズボンに、ごく薄い青色のシャツを着た真面目そうな男はそう言うと、 革張りの茶色いソファーに深く座り直した。 その隣にいる20代の青年は 少し脱色したやや短い髪をワックスで整え、 チェックの七分ズボンに 襟に細いピンクのラインが入った黒いポロシャツを着ており、 真面目そうな男とは対照的に 遊び人のように見える。 しかもその青年は顔を少し青くして、ソファーの端にしがみ付いていた。 「…それで?」 廉也が話を促すと、低いガラス机の向かいに座る 『健康的美少女』という言葉が見事に当てはまりそうな、ショートカットの女子大生が頷いた。 「美香のアパート、わりと近くに交番があるんです。110番したらそこの交番の人が15分で来てくれて、辺りを見回ってくれたらしいんですけど……」 「怪しい人物は見当たらなかった…と?」 ショートカットの女子大生が再び頷いた。 「ふむ……」 真面目そうな男はそう唸ってから、自分の鼻の前で人差し指をピンと立てた。
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