<第一章>とある5月の

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「綾部詩織さん。1つ聞きたいことがあるのだが…」 「えっ?…あ、はい。何でしょう。」 「あぁ、すまない。事件とは関係の無いことだ。肩の力を抜いてくれ。」 急に名前を呼ばれ驚いた表情の詩織に、笑いながら男が言った。 「はい。……すいません。こんなとこに来るの初めてなもので、緊張してしまって…」 「いやいや謝らなくて良い。『緊張』は大きな経験になる。今のうちに経験を積んでおくことだ。それよりも…」 男が、隣にいる青年に目を移して言った。 「こいつとは…結局どういう関係なのかな?」 「へっ?」 あまりの突拍子も無い質問に、詩織は目を泳がせた。 「…大介先輩から聞いてませんか?」 「こいつからは『後輩』だということしか情報を得られていない。」 「やっぱり…」 詩織が溜め息をついた。 そして男が、煩わしそうに顔をしかめる。 「おい厳原(イズハラ)。貴様はさっきから何をぶつぶつ呟いている」 名前を呼ばれた厳原大介は、ビクッと体を動かした。
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