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階段を降り、体育館へ続く渡り廊下に出るため、校舎内の廊下を横切ろうとした時。
ふと右に向けた視線の先に新入生と思わしき少女が一人、キョロキョロと周りを見回していた。
「……おい、そこの新入生。そんな所で何している」
迷っているのだろう様子を見かねて声をかけて見れば、少女は小さな身体を跳ねさせゆっくりと此方を向いた。
「えっと……ちょっと校舎を探検しようかなぁ~、と思って入ったら迷っちゃって……。あの……体育館ってどっちですか?」
「……」
少女は言いにくそうに苦笑する。竜斗は気付かれないように小さく溜め息を吐き、今行こうとしていた渡り廊下を顎で指した。
「体育館に行くならそっちじゃなくて、こっちだ」
「えっ!? あ、あれ……」
「……来い。連れてってやる」
今行こうとしていた方向と竜斗の示した方向を見比べながら混乱している少女を呼び、一足先に渡り廊下へと出る。
その後ろから少女の軽い足音が聞こえてきて、彼女が遅れないよういつもよりも歩調を弛めた。
「あの、先輩。ありがとうございます」
追いついた少女が隣に並ぶ。
さっきは少し離れていてよく分からなかったが、こうして近くで見ると、竜斗とはかなりの身長差があった。
艶のある真っ黒な長髪。高く結い上げた髪は、少女の雰囲気によく合っていた。
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