捕らわれの兎と純粋なる獣

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それは狼だったからだ…。 よっぽどの事がない限り、兎から狼に声を掛ける事はまずあり得ない。 仕事や公共機関では仕方ないとして、狼に失礼があった場合、人生を壊されかねないからだ。 それほど狼の存在は兎を脅かすもの、また権力を持っているのだ。 いつも考えなしに、思った事を行動に移してしまう雪乃の癖が、今回ばかりは考えなしでは済まされなかった。 後悔よりも、頭が恐怖で真っ白になり固まってしまった。 (狼だったなんて…!! ど、どうしよう?!! 兎の私から声を掛けてしまうなんて…!) 目を見開き、手はハンカチを差し出したまま動けずにいた。 周りでこの光景を見ていた者たちも、ざわめきだしたり息をのみ見つめていた。 .
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