〔木村 曜子〕

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住宅街を突っ切るように通りを歩いていると、たまに横を通る人がやたらとこちらに視線を向けてくる。 寝巻きのジャージ姿で、しかもメイクも何もしていない、髪もボサボサの状態。確かに端から見たら酷い格好なんだろうな。 けど、今の私にはあまり関係のないこと。 私は余計なことを考えず、ただ足の向くままにアスファルトの上を歩んでいく。 どんよりとした天候のせいか、今の時期にしてはそこまで暑くないけど、やっぱり汗で肌が段々とべたついてきた。 いつの間にか市街地に入り、平日にも関わらず行き交う人や車が街を賑わせている。 「…はぁ」 ちょうど目の前には数年前にオープンした比較的新しいデパート。 だらりと額を滴る大粒の汗。 私は微かに漂う冷気に吸い込まれるように、店内へと入っていった。
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