序章【日常に微睡む】

8/12
前へ
/26ページ
次へ
「い・や・だ」 「わっ、私と計くんは愛し合う仲だったのですかー!?」 「ぐ……は、離せ!」  金剛寺に制服の襟首を捕まれ、成す術なく引きずられる計と杏子。  ちなみに金剛寺勇美、49歳、独身。 「うるせえぇぇぇ! 羨ましいんだよ畜生ぉぉぉぉぉぉぉ!!」  扉の閉まる音が、誰もいなくなった屋上に虚しく響いた。     ▲▽ 「やっと終わったか……」 「酷い目に合ったのですよ……」  電球の説教(ただし大半は愚痴だった)が終わったのは、それから数時間が経過してのことだった。  すっかりやつれた様子の二人は、とぼとぼと学生用玄関を後にする。 「アンコってどの辺に住んでるんだ?」  既に辺りは暗かった。真夜中の学校というのはどこか不気味だ。  聞かれた杏子は、隣を歩く計に疑惑の視線を向ける。 「私の家を聞いて一体どうする気なのですか」 「送るんだよ」 「ははん、やっぱり送るつもりなのですね……、送る?」  一転して、杏子は心底不思議そうに計を見上げた。 「何をぽかーんとしてんだよ」
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加