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苦笑を浮かべた計は、
「夜の独り歩きは危ないだろ、特に女子の場合」
さも当然という風に言った。
「ち」
「ち?」
「ちょっと優しさを見せたくらいで私がキュンとするかと思ったら大間違いなのですよー!」
「いや、意味分かんないから」
首を捻って、すたすたと歩調を早めてしまう計。
置いていかれる形になった杏子は、次第に小さくなっていく計の背中を慌てて追いかける。
「お……送ると言っておきながら置き去りにするとは……、もしかして、これが噂のつんでれなのですか……!?」
「馬鹿言ってないで家の場所を教えてくれ。大体でもいいから」
「あぁ、それなら計くんちの近くですよ」
「よーし、ちょっと待とうか」
計は言うと共に立ち止まり、杏子の肩を掴んだ。
そのまっすぐな目に見つめられ、杏子は頬を林檎のような赤に染める。
「なんでだ」
「え…………?」
生唾を飲み込む。次に来る言葉を待つ。心臓が、強く脈打つ。
「なんでなんだよ」
「計……くん……?」
「なんで、学校でしか会わないお前が、それなのに、俺の家がどこにあるか知ってるんだよ!?」
「――はっ!」
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