2人が本棚に入れています
本棚に追加
「やっぱりお前ってストーカーだったんだな」
「ちちち違いますよ! やっぱりとか言わないでくださいっ!」
「じゃあ何で知ってるんだ?」
「それは…………そ、そうでした! この前、計くんが家から出てくるのを偶然見かけたんです! そうに決まってます!」
「ふーん……」
依然として疑いの視線を向ける計から逃げるように、杏子は妙に引きつった笑みを浮かべる。
口笛を吹いた。下手だった。
と、口笛――そう呼んでいいのかは極めて不明瞭だが――に混じって、別の音が響く。
それは、静かなる靴音。
その靴音は二人の背後から、ゆっくりと、それでいて着実に近づいてきている。
少しずつ大きくなる音が、そのことを如実に物語っていた。
この時間、計と杏子の他にも、高校の敷地内に残っている生徒が居たのだろうか。
もしくは教師という可能性もあったが、しかし、それは無意識に、不可抗力に――
「……まずいな」
嫌な予感が、してしまった。
そして。
今日だけで二度目となる嫌な予感は、やはりというか、的中する。
首だけで振り返った計は、ほぼ反射的に息を飲んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!