序章【日常に微睡む】

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 くりくりとした二重瞼の瞳、顔の輪郭は丸っぽく、どこか小動物を思わせる。こういうのを童顔と言うのだろう。 「何しにきた、アンコ」 「それはこっちの台詞ですっ! 授業をサボったらいけないのですよ!」 「…………そう言うお前もあれだよな。現在進行形でサボってるよな」 「ぎくり」  痛いところを突かれて、あたふたとする少女、一名。  しかし、すぐさま厄介にも開き直ると、今度はぷんぷんと怒り出す。  背中辺りまで伸びた金色の長髪と、水色のリボンが揺れた。 「わ、私のことはどうでもいいのですよっ。それより、杏子の名前は“アンコ”じゃなくて、“アンズ”だって前から言ってるじゃないですかー!」  さっきから“ですです”うるさい少女、如月 杏子(キサラギアンズ)は頬を風船のように膨らませた――が、可愛らしいだけで別に怖くはない。  よって、無意味。 「分かったよ、アンコ」 「ががーん! 全然まったくこれっぽっちも分かってくれてないのですよー!?」 「それで結局なんの用だ? まーた“いつも通り”のストーカーか?」 「なななななっ! 私はストーカーさんではないのですよー!?」
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