序章【日常に微睡む】

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「……急にどうした」  寝ながらする話では、多分ないのだろう。  地面に手をついて。計は上半身だけでも起こした。  さんさんと、頭上からは暖かな日差しが降り注いでいる。眩しくて目を細める。真っ青なキャンパスを、白い雲が流れるように漂っていた。  杏子はといえば、半歩ほど身を引いてしまっている。 「うぅ、怒らないでくださいなのです」 「勘違いだ。別に怒ってない」  杏子の疑いは尚も続く。 「本当ですか……?」 「あぁ」 「本当に本当ですか……?」 「あぁ」 「本当に本当に本当――」「いい加減しつこいぞ」 「ご、ごめんなさい」  涙目になった杏子は、制服のスカートを指でつまみ俯いてしまう。  正直、自業自得だったが、何となくいたたまれない気分になって、計は頭の後ろをぽりぽりとかく。  ――俺は、甘いのかもな。  付き纏われる理由の一端が自分にもあることを自覚しながら、ゆっくりと口を開いた。 「今のはなかったことにしてやるから」  そう言った瞬間、杏子の顔がぱあっと輝いた。
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