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「だ、そうだよ、和真君?」
目の前で頭をガリガリと掻いて、
和真は表情を苦く歪めた。
鈴華がカオリと別れたあと、
大学の敷地内を一人で歩いていたら、
たまたま和真にばったりと出くわした。
ので、とっつかまえて事情説明。
「アイツの甘えたがりは今に始まったことじゃねぇからいーけど、
そっかー。そんなこと言ってたのか…」
腕を組んで悩み始めた和真に、
鈴華は呆れ混じりにぼやく。
「就活が忙しいからって全く会えないほどじゃないんだろう?
君の頑張りは認めるけれど、
カオリへのプレゼントを買うのにバイトを増やしても、
あのコを不安がらせたら意味ないだろう」
そろそろカオリの誕生日だけど、
彼女本人は忘れてたと言うか、
それどころじゃなかったようで、
気にもしてなかったけれど。
と鈴華は思いはして、言わなかった。
「…いや、まぁ、そうなんだけどな。
お前の言う通りだよなぁ」
とか唸りながらスケジュール帳を開く和真。
次の休みを確認しているんだろう。
「そもそもメールぐらい返してやれ。
君からも送ってやれ。
それで多少は和らぐんじゃないか?」
実際、たまたまとはいえ、
こうして鈴華と話している。
「いや、ぶっちゃけ隠し事苦手なんだよ」
唐突に和真がよくわからないことを言い、
「は?」
鈴華は思わず聞き返した。
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