第一話

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笑い声が教室に響いた。 静真は頭を押さえて、 机に突っ伏している。 「俺の授業で寝るたぁ、 良い度胸してるなぁ、静真」 現国教師の櫛屋先生の、 本の角攻撃は洒落にならないほど痛い。 「…くぉぉ…!体罰だろ、これ…!」 一人悶えているのに、 誰も心配してくれない。 授業毎回こうだと心配する気なんて、 きっと誰にも無い。 日常茶飯事過ぎて、 もう笑い話にしかなってない。 「もう、静真、だから言ったのに」 静真の後ろの席の、 里緒菜だけが心配そうに彼に話しかけた。 「私、さっき起こしたんだよ? 気付いてた?」 確かに揺すられた気もしたが、 静真は眉をひそめて首を捻った。 「いや、まったくわかんなかった。 ダメだよ里緒菜ー、 王子様はキスで起こさなきゃー」 悪戯っぽく笑い、 静真は里緒菜に返した。 「き、キス…!?」 真っ赤になるあたり、 里緒菜の純粋さがわかって、 静真は楽しくなってしまった。 「そーそー、じゃなきゃ、 目なんて覚めな…」 「まぁだ寝呆けてるみてぇだなぁ?」 ズドン、と鈍い衝撃と激痛が、 静真の頭をもう一度襲った。  
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