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聞きたくなくて、あの場所から逃げてきた。 癌、って聞いて、今すぐ中丸のとこに行きたいっていう自分と、何が病気だ、言い訳してんじゃねぇって言う自分。 今、逃げ出したのは恐らく、後者が勝っていたから。 T「上田!!」 「聖……」 T「少し、話そう」 今の俺の気持ちは、話したくない。 でも、聞かないといけない気がした。 T「なんで逃げたんだよ」 「逃げたんじゃない。言い訳なんか聞きたくなかったんだ」 T「言い訳とかで癌なんて言う奴居るわけねぇだろ!!」 どうしよう…。 思ってることと逆の言葉が出てくる。 T「中丸は、自分から嫌われるように仕向けたんだ!!」 「何のために…」 じゃあ、あれは芝居だったってこと? 素っ気ない返事も疲れた態度も全部? T「『竜也が知ったら、泣くだろ…』って、あいつは言ってた」 「……!!」 T「中丸は嘘はついてない。病気であることを隠してたんだ」 なにそれ…。 T「中丸のこと、嫌いになれなかったんだろ?今でも好きなんじゃねぇの?どうなんだよ」 そんなの決まってる。
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