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巨大な二つの目玉が、赤く炯炯と光る。
こちらに近付くほどその影は巨大なさまを克明かつ明瞭に見せた。
それが一層村人たちには畏怖心を駆り立てた。
「もう止めてくれ」
彼らは生きた心地はしない。
今まで、その怪鳥に殺された人間は一人もいなかったが、家屋を手当り次第に破壊された。
そのたびに、村人たちは力を合わせ修復作業に取り掛かるが、忘れた頃にまたあらわれ破壊される。
みんなで、この村を離れようと考えたこともあったが、それは叶わぬ理想でしかなかった。
いまこの地を離れたところで行く宛てもなければ、領地を紹介してくれる仲介人もいない。ましてや狭小の荒れ果てた集落の人間に、土地を分け与えるほど寛大な村もないだろう。
この世に神がいるとするならば、それらの存在を心から恨んだ。
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